バシールとワルツを Waltz With Bashir



日曜日イスラエル・フランス・ドイツ合作劇場アニメーション「バシールとワルツを」みました。
今年のカンヌにはあまり興味なかったので、私がこの映画を知ったのは‘AsiaPacific映画祭で「ストレンヂア」をやぶったアニメ’としてですが。(笑)韓国上映を望むファンとしては映画賞などはとても大事なんです、なにしろそういった賞を受けるたび知名度も上がるし海外での正式上映の可能性も高まるもので。だからAsiaPacific映画祭のアニメーション賞に期待したんですが...なんと聞いたことのないアニメが勝っちゃったのであわててどんな作品か調べてみました。「バシールとワルツを」:‘世界最初のドキュメンタリーアニメ’‘82年のレバノン戦争を扱っている’まで読むとあーもうこりゃ相手にならないなーしょがないーとさっぱりな気分になりましたが。(笑)別にどっちが優秀な問題ではなくて、全然違うタイプの映画だし、映画祭の中では好まれるタイプの映画って確かあるし。それぞれ大事だと思いますけどね。

要するとそういうわけで「バシールとワルツを」という映画に興味をもつことになりました。元々ああいう映画は嫌いではないし、予告編の独特なアニメもかなり気に入ったし。だからソウル上映のことを聞いてミョンドンの劇場まで観にいきました。で感想は、‘さすがヂアをやぶった映画!’(結局ヂアかよ!)...だけじゃなくて本当にいい映画だったんです。

「バシールとワルツを」はドキュメンタリーなので、インタビューされた人は2人を除いて全員本人の声で、本当の経験を語っているのです。イスラエル人監督アリ・フォルマンは、ある日友達から‘2年前から26匹の犬に追われる悪夢をみている’という話を聞き、それが82年のレバノン戦争での経験と繋がりがあると分かって、ふと自分はレバノン戦争に参戦したのに戦争について何も覚えていないことに気付きます。失われた記憶を取り戻すため、アリは元戦友達に連絡をとって彼らの話を聞きます。そのたびアリ自身の記憶も少しずつ戻り、戦争の終着点であり一番忌まわしい瞬間のサブラ 、シャティーラの虐殺まで近づきます。

たしかサブラ 、シャティーラ受容所のパレスタイン民間人3000人を殺したのはレバノンのキリスト教民兵隊だったが、彼らの受容所出入を許可し、3日間照明弾を発射し虐殺の夜中を照らしたのはイスラエル軍部の命令に従ったイスラエル軍人達です。つまり見殺しです。なのになぜ私はそんなショッキングな事件のなにも覚えてないのか、と悩むアリの心には‘覚えてないこと’自体に対する罪責感があったかも知れません。忘れてしまったことの‘罪’の重さが彼を動かせ、この映画を作らせたのではないでしょうか。

アリ・フォルマンがアニメーションを選んだのは、もちろん友達のプライバシーを守るためもありましたが、アニメーションの無限なる表現力を生かせたかったこともあったと思われます。特にこの映画が‘記憶’を扱っているからこそ、現実と幻想、夢と記憶の境界を自由に往来できる媒体が必要だったでしょう。たとえば死体いっぱいの戦車に乗りながら見えない敵に撃ちつづける醜くて生々しい場面と、無数の死体を被るカバーシートがヘリポート照明の中できらきら光る美しくて夢幻的な場面が交差します。26匹の犬に追われたという友達の夢は、彼が音を鎮めるため殺したレバノンのある村の犬26匹だったんです。抑えた記憶は消えることなく、夢や幻想などいろんな形で現れるのです。その曖昧さや微妙さを表現するためにアニメはとてもふさわしい媒体だったと思われます。「バシールとワルツを」のアニメーションは3DとFlashを使ったもので、特有の美しさと個性があり、大変印象的でテーマともよく似合う演出でした。映像的にもすすめたい映画です。

アリの元戦友の中では過去の記憶を話すことかなんともないような人もいるし、本当に苦しそうな人もいるし、救われたと言ってる人もいます。アリは忘れたことに罪意識をもち、自分では思い出せないから覚えてる人に聞く方法で自分の記憶を取り戻す作業を行いますが、それは逆に言うと‘覚える’ことで彼はなんとか楽になりたがってると言えるかも知れません。許されるとか、救われるまでは分かりませんが、せめて忘れたことが彼にとっては苦しみだし、覚えようとすることで少しだけでも楽になりたいーつまり覚える行為の重さと力を、私はこの映画から感じました。

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